IT企業のM&A

仲介とFAの違い:IT企業の売却ではどちらに頼むか

仲介は売り手と買い手の双方を支援し、FAは契約した一方を支援します。役割・報酬の受け取り方・確かめる点を整理しました。

確認 2026-10-04

目次(8項目)
  1. ひと目でわかる違い
  2. 仲介のしくみ
  3. FAのしくみ
  4. ガイドラインが言う「利益相反」
  5. 手数料の構造の違い
  6. 複数の会社に相談するときの段階
  7. どちらが向くかの判断表
  8. 面談で聞くこと

ひと目でわかる違い

比べる点仲介FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
契約の相手売り手と買い手の両方売り手か買い手の一方
支援する相手両方の間に立ち、両方を支援する契約した側を支援する
報酬を受け取る相手売り手と買い手の両方契約した側(相手方から受け取らないかは契約で確認)
成功報酬の計算レーマン方式と最低報酬が中心レーマン方式が多いが、契約ごとに決める
着手金・中間金売り手は無料とする会社が多い中間報酬や着手金、月額報酬がかかる契約もある
利益相反構造上起こりうる。契約前に書面で説明を受ける相手方との利害の対立は小さい。ただし成功報酬による成約優先の動機などは残る
ポイント

仲介は双方を支援し、FAは契約した一方を支援します。そのうえで、報酬を誰から受け取るかも確かめます。名称より、契約で何をしてくれるかが大事です。

仲介のしくみ

仲介会社は、売り手と買い手の両方と契約します。相手探しから条件の調整、契約の手続きまで、間に立って進めます。

報酬も両方から受け取ります。料金ページで、次のように公表している会社があります。

買い手が払う手数料は、売り手の手数料に上乗せされるものではありません。ただ、買い手は取得にかかる総額で予算を考えます。費用を誰が負担するかは、分けて整理してください。

仲介会社には、買い手候補の登録数を公表しているところがあります。たとえばIT M&A支援センターは、約19,500社の買い手候補が登録していると公表しています(特長)。

登録数は、自社に合う買い手の数や、いま買う意欲がある会社の数とは違います。面談では、自社の業態・規模に合う候補がどれだけいるか、最近いつ接触したかを聞いてください。

FAのしくみ

FAは、売り手か買い手のどちらか一方とだけ契約します。契約に基づき、依頼者の側で価格や条件の交渉を支援します。

仲介とFAの両方を扱う会社もあるため、会社名だけでは形が分かりません。面談では「今回の契約は仲介ですか、FAですか」と確かめてください。

FAでも、利益相反が完全になくなるわけではありません。成功報酬なら、成約を急ぐ動機は残ります。買い手との紹介関係や、ほかの業務での取引がないかも聞いてください。

ガイドラインが言う「利益相反」

利益相反とは、一方に有利にすると、もう一方に不利になる関係のことです。売り手は高く売りたく、買い手は安く買いたいので、両方から報酬を受け取る仲介は構造上この関係を抱えます。

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」は、2026年10月時点で第3版(2024年8月)が最新です(中小企業庁)。ガイドラインと登録制度のルールでは、次の点が定められています。

決まりごと中身
契約前の重要事項説明17項目を書面で説明する。手数料(最低手数料を含む)、相手方の手数料、利益相反などが入る
優遇の禁止追加の手数料を払う買い手や、何度も依頼するリピーターを優遇してはいけない
広告・営業の禁止事項即決を迫る、過大な値段を示す、成約できると断定する、などの営業をしてはいけない

出典は中小M&Aガイドライン第3版と、M&A支援機関登録制度の公募要領です。

仲介を選ぶなら、重要事項説明の書面で「相手方からいくら受け取るか」を確かめてください。そのうえで「売り手の利益をどう守るのか」を直接聞くと、会社ごとの考え方が分かります。

手数料の構造の違い

当サイトに掲載している会社の公式情報から、仲介とFAの例を並べます。金額はすべて税別です。

会社(形)着手金中間金成功報酬の計算のもと最低報酬
ストライク(仲介)なし基本合意報酬100万円(資産総額10億円以下)オーナー受取額2,000万円
インテグループ(仲介)なしなし株式価値1,500万円
日本M&Aセンター(仲介)100万円から(簿価総資産2億円以下は100万円)報酬表に記載なし時価総資産2,000万円
M&Aキャピタルパートナーズ(仲介)なし手数料総額の約10%株式価額公式に記載なし(登録DBでは2,500万円)
中小企業ファイナンシャルアドバイザリー(FA)公式に記載なしあり(金額は非公開)譲渡金額1,000万円
オンデック(FA形式)公式ページで確認公式ページで確認移動総資産(≒譲渡額+負債総額)2,500万円

FAでは、着手金やリテーナー(作業期間中の月額報酬)を求める契約もあります。ファイブ・アンド・ミライアソシエイツは、事業再生のM&Aでは着手金・リテーナー契約の場合があると書いています(報酬体系)。

成功報酬だけを比べると、FAが高いとも安いとも言えません。破談しても戻らない費用があるかどうかで、負担の形が変わります。計算のもとの違いは手数料のしくみで説明しています。

複数の会社に相談するときの段階

「複数の会社に相談する」には、いくつかの段階があります。段階ごとに、外に出る情報とリスクが違います。

段階外に出る情報気をつける点
匿名での初期比較業態や規模のおおまかな情報社名を出さなければ、比較のための面談は数社でもしやすい
秘密保持契約の後の資料開示社名、決算書などの詳しい情報渡す先が増えるほど、流出の窓口が増える
委託契約(仲介・FA契約)契約した会社が資料を持つ専任かどうか、契約期間、テール条項を確かめる
買い手への打診買い手候補に会社の概要が伝わる複数の会社が同じ買い手に打診すると、心証を損ねることがある

ガイドラインが注意しているのは、主に最後の段階です。複数の支援機関がマッチングを試みると、「譲り渡し側に関する情報が必要以上に外部に流出するおそれ」があるとしています。

例として、同じ売り手の情報が同じ買い手に複数から届くと、買い手の心証が害されうると書いています。そのうえで、単独に頼むか複数に頼むかは、利点と注意点を比べて選ぶよう求めています。

IT企業では、情報が漏れると困ることが多くあります。ガイドラインも、情報が伝わると「取引先の喪失や従業員の退職等」が起こりうると注意しています。

気をつける点中身
情報の流出社名や決算の情報が、渡した先の数だけ外に出る
専任契約1社としか契約できない形がある。M&Aベストパートナーズは専任契約形式と公表している
テール条項契約が終わった後でも、その会社が紹介した相手と成約すると報酬がかかる場合がある

ガイドラインは、テール期間を最長でも2〜3年以内を目安とするのが望ましいとしています。対象は、社名を開示して紹介された相手に限るべきとしています。社名を伏せた資料を見せただけの相手は、対象にすべきでないとしています。

これはガイドラインの考え方で、個々の契約の効力を決めるものではありません。実際の契約書でテール期間と対象の範囲を読み、不明な点は弁護士に確認してください。

ポイント

比較の段階は匿名で始め、秘密保持の約束を交わしてから決算書を渡してください。契約前に、専任かどうかとテール条項の期間・対象を書面で確かめます。

どちらが向くかの判断表

あなたの状況比べ方理由
買い手の候補がまだなく、広く探してほしい仲介・FAの名称ではなく、探し方で比べる探索の範囲、候補先リストの作り方、打診の方法は会社ごとに違う
取引先や同業から「買いたい」と声がかかっている売り手側のFAや、交渉支援に強い会社を候補に入れる相手探しより、自分の側に立った条件交渉が必要になる
価格や条件について、売り手側の助言者がほしい売り手側FAを候補に入れる交渉支援・法務対応・代理権の有無は契約で確かめる
譲渡額が1億円前後で、手数料を抑えたい最低報酬の低い会社や、マッチングサイトも比べる大手の最低報酬2,000万〜2,500万円は、譲渡額1億円の2割を超える。支援の範囲も合わせて比べる
仲介にするが、利益相反が気になる仲介(書面で確認)重要事項説明で、相手方の手数料と利益相反の扱いを確かめる

譲渡額の見込みごとの比べ方は、IT企業の相談先の比較にまとめています。最低報酬の低い会社では、IT M&A支援センターやバトンズなどが候補になります。

面談で聞くこと

自社の数字で手数料を比べるには、手数料の計算を使ってください。

LINEで相談先を聞くどこに相談すればいいか、手数料はいくらか。社名を出さずにLINEで聞けます。

LINEで相談先を聞く

会社名なしで相談できます。サイト運営:株式会社楽笑

担当者が内容を読んで返信します。売り込みや営業電話はしません。相談内容を相談先に伝えるのは、ご本人が希望し、伝える先と内容に同意した場合だけです。情報の取扱い

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