はじめての方へ
廃業か、売却か。会社をたたむ前に比べること
会社をたたむ前に、廃業・売却・親族への承継・社員への承継の4つを比べます。費用と手間、赤字でも売れるか、判断の順番まで。
確認 2026-10-05
はじめに:たたむ前に知ってほしいこと
後継者がいないとき、道は廃業だけではありません。会社や事業を、外の会社や人に引き継いでもらう方法もあります。これを「第三者承継」や「M&A」と呼びます。
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」に、次の記述があります。休廃業・解散した会社の約6割は、直前の決算が黒字だった、という内容です(事業承継ガイドライン第3版)。直前の決算が黒字でも、たたむ会社は少なくありません。
廃業は最後まで選べる道です。ただし決めるのが遅いほど、ほかの道は選びにくくなります。
4つの選択肢をひと目で比べる
| 比べる点 | 廃業 | 第三者への売却 | 親族への承継 | 社員への承継 |
|---|---|---|---|---|
| 会社 | なくなる | 残る(事業だけ移す形もある) | 残る | 残る |
| 従業員 | 解雇の手続きが必要 | 雇用を続けてもらう形をめざせる | 続く | 続く |
| 取引先 | 取引は終わる | 続けられる可能性がある | 続く | 続く |
| 借入・個人保証 | 返し切るか、債務の整理が必要 | 買い手・金融機関との話し合いになる | 後継者が引き継ぐかが課題 | 社員には負担が重くなりやすい |
| 社長の手元に残るお金 | 資産を売り、借入などを払った残り | 売却代金から手数料と税金を引いた額 | 株の渡し方(贈与・相続・売買)で変わる | 社員が株を買うお金をどう用意するかで変わる |
| かかる時間 | 清算だけで2か月以上 | 相手が見つかる時期は読めない | 後継者を決めてから3年以上が半数超 | 親族と同じく長くかかる |
| 主な相談先 | 税理士・弁護士・引継ぎ支援センター | 引継ぎ支援センター・仲介・FA・金融機関 | 税理士・金融機関・引継ぎ支援センター | 税理士・金融機関・引継ぎ支援センター |
「2か月以上」は会社法第499条の手続きによります(法務局の清算結了登記の記載例)。「3年以上が半数超」は事業承継ガイドラインの記述です。
廃業にかかるお金と手間
会社をたたむ流れ
株式会社をたたむときは、「解散」と「清算」という2つの段階を踏みます。解散で事業をやめ、清算で財産と借金を片づけます。
- 株主総会で解散を決め、清算の担当者(清算人)を選ぶ
- 法務局で、解散と清算人の登記をする
- 官報に公告し、分かっている債権者には個別に知らせる
- 資産を売り、借入金や買掛金、税金を払う
- 残った財産があれば、株主に分ける
- 決算報告を株主総会で承認し、清算結了の登記をする
- 税務署などに、解散や清算結了を届け出る
法務局の記載例には「清算人の就任後2か月以内に清算が終了することはありません」とあります。債権者が名乗り出るための期間を、2か月以上取る決まりがあるためです(会社法第499条第1項)。
税務署には「異動届出書」を出します(国税庁 異動事項に関する届出)。解散した後も、清算が終わるまで税金の申告は続きます。
登記にかかる税金(登録免許税)
| 登記 | 登録免許税 |
|---|---|
| 解散の登記 | 3万円 |
| 清算人・代表清算人の選任の登記 | 9,000円 |
| 清算結了の登記 | 2,000円 |
| 合計 | 4万1,000円 |
出典は法務局の申請書の記載例です(解散・清算人選任、清算結了)。
このほか、官報への掲載料がかかります。司法書士や税理士に頼めば、その報酬もかかります。金額は依頼先で違うため、見積もりで確かめてください。
従業員の扱い
廃業では、従業員に辞めてもらうことになります。会社が解雇するときは、少なくとも30日前に予告しなければなりません。予告しない場合は、30日分以上の平均賃金を払います(厚生労働省 確かめよう労働条件)。
取引先への説明
中小企業庁の調査では、廃業で苦労したことの上位は次のとおりです(事業承継ガイドライン第3版)。
- 顧客や販売先への説明:31.8%
- 従業員の処遇:26.7%
- 資産の売却先の確保:13.0%
数字だけでなく、人への説明に手間がかかることが分かります。
借入と個人保証
資産を売っても借入を返し切れないことがあります。社長が会社の借入を個人で保証していれば、残りは社長個人に請求されます。
この負担を軽くするための考え方が、「経営者保証に関するガイドライン」です。廃業時の扱いを整理した文書が、2022年に公表され、2023年に改定されました(全国銀行協会 経営者保証ガイドライン)。主な中身は次のとおりです(廃業時の基本的考え方)。
- 会社が廃業しても、保証人は破産を避けられる場合がある
- 早く廃業に取りかかるほど、手元に残せる財産が増える可能性がある
- 一定期間の生活費や「華美でない自宅」を残すことが検討される
- 保証人に財産がなければ、返す額ゼロの計画も認められ得る
使うには、会社の側でも債務整理の手続きを取るなどの条件があります。借入が残りそうなら、早めに弁護士へ相談してください。
借入と保証は、早く動くほど選べる手が増えます。資金が尽きる前に相談することが大切です。
売却(第三者承継)で残るもの
会社を売ると、会社や事業は買い手のもとで続きます。従業員の働く場所、取引先との関係、技術やのれんが残ります。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」は、早く検討するほど良いと書いています。雇用を守りやすくなり、社長の手元に残る代金も多くなりやすい、という理由です(中小M&Aガイドライン第3版)。実際に、第三者承継は年に数千件の規模で行われています。
| 実績 | 件数 | 出典 |
|---|---|---|
| 事業承継・引継ぎ支援センターの第三者承継の成約(令和7年度) | 2,265件(過去最多) | 中小機構 2026年5月29日 |
| M&A支援機関登録制度の登録機関が関わった譲渡側の件数(2024年度) | 4,940件 | M&A支援機関登録制度 |
売るときにかかるお金
売却では、仲介会社やFAに報酬を払います。大手には最低報酬を2,000万〜2,500万円としている会社があります(M&A総合研究所、fundbook)。
中小企業庁の資料では、小さい案件ほど手数料の割合が高くなります。譲渡額1,000万円以下の区分では、手数料率の中央値が約100%でした。売り手と買い手の報酬の合計で、グラフからの読み取りです(中小企業庁 2026年3月17日資料)。
会社が小さいほど、手数料の割合は重くなりがちです。最低報酬がいくらかを、最初に確かめてください。
規模が小さい会社は、相談先の選び方が大切です。公的な引継ぎ支援センターは、相談が無料です(事業承継・引継ぎ支援センター)。手数料の比べ方は手数料の計算と仲介とFAの違いにまとめています。
親族・社員への承継
親族や社員に継いでもらう方法もあります。会社も従業員もそのまま続く点は、売却と同じです。
ただ、親族に継がせる会社は減っています。直近5年の交代では、親族内承継は約35%でした(中小企業庁の2015年調査、事業承継ガイドライン第3版)。
| 方法 | 良い点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 親族への承継 | 周りに受け入れられやすい | 本人の意思と、育てる時間が要る |
| 社員への承継 | 仕事と会社をよく知っている | 株を買うお金、親族の株主の了解、個人保証 |
どちらも、後継者を決めてから引き継ぎ終わるまで3年以上かかる会社が半数を超えます。10年以上かかる会社も少なくありません(事業承継ガイドライン第3版)。
赤字・債務超過でも売れるか
答えは「売れる場合はある。ただし、すべてではない」です。債務超過とは、借金などの負債が資産より多い状態のことです。
売れる場合
中小M&Aガイドラインは、赤字や債務超過でも買い手が現れることは大いにあり得る、と書いています。買い手は数字だけでなく、次のようなものを見るからです。
- 技術やノウハウ、特許
- 良い取引先との関係
- 腕のある従業員
- 地域での知名度や信用、許認可
帳簿の上では債務超過でも、資産を時価で見直すと資産のほうが多い場合もある、とも書かれています。会社全体は赤字でも、黒字の部門や店舗だけを売る方法もあります。その代金を、残りをたたむ費用に回せる可能性があります。
難しい場合
売却が難しかった例が、国のガイドラインに載っています。
- 大幅な債務超過で、黒字にする見通しがなく、設備も古かった。引継ぎ支援センターが売却は難しいと説明し、社長は廃業を選んだ(事業承継ガイドライン第3版)
- 手をつけるのが遅れて資金が尽き、売れずに廃業した(中小M&Aガイドライン第3版)
2つ目の例のように、資金が尽きると選べる道がなくなります。また、債務超過の会社が事業を不当に安く売ると、債権者から取り消しを求められるおそれがあるとガイドラインは注意しています。破産した場合の価値を相当程度上回る値段が求められる、とも書いています。
公的な窓口の役割
| 窓口 | 役割 | 費用・場所 |
|---|---|---|
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 売れる見込みがあるかを一緒に考える。相手探しや民間の支援機関の紹介 | 相談は無料。紹介された民間機関の支援は有償 |
| 中小企業活性化協議会 | 金融機関との返済条件の見直しや、借金を減らす話し合いを支える | 各都道府県に設置 |
センターの費用は公式サイトの記載です(第三者承継|事業承継・引継ぎポータル)。活性化協議会の役割は、中小M&Aガイドラインの記述によります。
赤字でも、まず「売れるかどうか」を聞いてみる価値はあります。聞くのが早いほど、選べる方法が多く残ります。
判断の順番(チェックリスト)
上から順に進めると、選べる道を残したまま決められます。事業承継ガイドラインが廃業前の準備に挙げる項目も含めています。
- [ ] 会社の数字を知る(直近の決算書、借入の残り、個人保証の有無)
- [ ] 資金繰りがいつまで続くかを確かめる
- [ ] 親族や社員に、継ぐ気持ちがあるかを確かめる
- [ ] 引継ぎ支援センターに、売れる見込みを無料で聞く
- [ ] 売るなら、譲渡額の見込みに合う相談先と手数料を比べる
- [ ] 借入が残りそうなら、弁護士や活性化協議会に相談する
- [ ] 廃業を決めたら、廃業にかかるお金を確保する
- [ ] 取引先・金融機関・従業員に説明する順番と時期を決める
複数の支援機関が同時に買い手探しをすると、会社の情報が必要以上に外に出るおそれがあります。中小M&Aガイドラインもこの点を注意しています。最初の比較は、社名を出さずに始めてください。
相談について
当サイトは、売却の申込みを受け付けていません。どこに相談すればよいか迷ったら、LINEで聞いてください。
担当者が読んで返信します。社名を書く必要はなく、売り込みもしません。
LINEで相談するどこに相談すればいいか、手数料はいくらか。社名を出さずにLINEで聞けます。
LINEで友だち追加担当者が内容を読んで返信します。売り込みや営業電話はしません。相談内容を相談先に伝えるのは、ご本人が希望し、伝える先と内容に同意した場合だけです。情報の取扱い