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M&A詐欺・悪質な買い手の手口と見分け方
経営者保証を外さず会社のお金を移す買い手など、国が注意を出した手口と、契約の前に見分ける点、売り手を守る条項をまとめました。
確認 2026-10-04
目次(10項目)
はじめに:国が名指しで注意した手口がある
会社を売った後に、買い手が約束を守らない。そうした事例を受けて、中小企業庁は2024年から注意を重ねて出しています。
この記事は「どんな手口だったか」と「契約の前にどう見分けるか」に絞ります。国の公表の年表や相談窓口は、M&Aのトラブルと悪質な買い手・業者を避けるにはにまとめています。
手口の中心は「経営者保証を外さないまま、会社のお金を移す」ことです。契約書で防げる部分があります。
国が注意した「不適切な買い手」の手口
株式譲渡の後に起きたこと
中小企業庁は2024年5月の注意喚起で、報道で指摘された買い手の手口を説明しています(中小企業庁 周知・注意喚起)。流れを順に並べると次のとおりです。
| 段階 | 起きたこと |
|---|---|
| 提案 | 低い譲渡額で、社長の経営者保証を引き受けると持ちかける |
| 株式譲渡の後 | 経営者保証を引き受けない |
| その後 | 会社の現預金などの資産を、買い手の側へ移す |
| 結果 | 会社の支払いが滞り、倒産に至る |
経営者保証とは、会社の借入を社長が個人で保証していることです。会社が倒産すれば、銀行は保証人の社長に返済を求めます。売ったはずの会社の借金が、社長個人に残ることになります。
国の資料は、こうした行為が複数回にわたり行われたと書いています。特に「保証の引受けを前提に、低い譲渡額を示される」場合に注意するよう求めています。
ガイドラインが挙げる行為
国の「中小M&Aガイドライン」も、次のような買い手を挙げています(中小M&Aガイドライン第3版)。
- M&Aの後に、売った会社の資金を個人の口座に送るなど、違法が疑われる行為をする
- 最終契約で決めた義務を守らない
- 経営者保証を移す想定だったのに、移さない
国が取った対応
2024年10月、中小企業庁は、こうした買い手とのM&Aを支援した15の登録機関に注意を出しました。対策が取られるまで、公的窓口との連携も止めています(中小企業庁 2024年10月30日の公表)。
2025年1月には、資金力に疑いのある買い手と知りつつ成約させた1社の登録が取り消されました(2025年1月の公表)。その後の注意も含めた年表は、トラブルの記事にあります。
怪しい買い手を見分ける点
契約の前に見るサイン
国の資料とガイドラインに書かれている点を、売り手が確かめられる形に並べました。1つでも当てはまれば、立ち止まってください。
| サイン | なぜ危ないか | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 譲渡額がとても低く、「保証は引き受ける」と言う | 国が名指しで注意した組み立て | 公的窓口や士業に意見を聞く |
| 保証を外す時期と方法が、契約書に書かれていない | 外れないまま会社だけが渡る | 最終契約の条文で確かめる |
| 代金を、引き渡しの後に分けて払うと言う | 払われないおそれがある | 一括で払えない理由を聞く |
| 退職金を、引き渡しの後に払うと言う | 業績しだいで払われないおそれ | 金額と期日を契約書に書く |
| 決算書や登記、資金の出どころを見せない | 代金を払う力が分からない | 仲介会社の調査結果を聞く |
| 考える時間をくれず、すぐの調印を迫る | 確かめる前に決まってしまう | 弁護士に見てもらうまで待つ |
分割払いと退職金の後払いは、ガイドラインも「不履行となるリスクがある」と書いています。支払いの期間が長いほど、危険が高いとしています。
仲介会社・FAに聞くこと
ガイドラインは、仲介会社やFAに、買い手を調べるよう求めています。マッチングサイトの運営会社も、この対象に含まれます。
- 買い手の財務の状態と、代金を払えるだけのお金があるか
- 代表者・役員・株主が、反社会的勢力でないか
- 過去にM&Aでトラブルを起こしていないか
- 税務申告書や登記を、実際に確かめたか
調べる時期は、買い手との契約の前と、交渉が進む途中です。売り手の会社が債務超過のときは、特に慎重に調べる必要があるとしています。
「どこまで調べたか」を、最終契約の前に書面で聞いてください。答えがあいまいなら、それ自体が判断の材料になります。
契約で身を守る条項
経営者保証の外し方を契約に書く
ガイドラインは、保証を外す、または買い手に移すと決めたら、最終契約に明確に書くよう求めています。具体的には次のような書き方です。
| 書き方 | 中身 |
|---|---|
| 買い手の義務にする | 保証を外す、または移すことを、買い手の義務として書く |
| 引き渡しの条件にする | 外す手続きが進まなければ、引き渡しをしない |
| 同じ日に行う | 引き渡しの日に、代表者の変更登記と保証の手続きを同時に行う |
| 借入を返してもらう | 引き渡しの時に、買い手の資金で借入を返し、買い手が借り換える |
| 解除と補償 | 外れなかったときに、契約を解除できる、補償を受けられる |
最後の「借入を返してもらう」方法は、保証を確実に外す手段としてガイドラインに載っています。銀行への事前の相談も考えられるとしています。
契約書は調印の前に弁護士へ
最終契約は、調印の前に弁護士に見てもらってください。ガイドラインも、調印前のセカンド・オピニオンを有効としています。
秘密保持の条項があっても、相談先を対象から外せば相談できます。ガイドラインは、買い手はこの申し出を拒むべきでないとしています。条項ごとの見方はM&Aの契約書で売り手が確かめることにまとめています。
「M&A仲介が怪しい」と感じたときの確かめ方
買い手だけでなく、仲介会社が信用できるかも確かめます。次の3つは、誰でもすぐに調べられます。
- 国の「M&A支援機関登録制度」のデータベースで、登録の有無を見る
- 中小企業庁の公表で、注意や登録取消しを受けていないかを見る
- 手数料の計算方法と最低報酬を、データベースと契約書で突き合わせる
当サイトの相談先の一覧では、会社ごとに登録の状況と手数料をまとめています。登録があっても支援の質は会社で違う、と国の資料も書いています。
M&Aの営業電話の断り方
売る気がないなら、はっきり断るのが一番の守りです。ガイドラインは、断られたら営業を止めるよう仲介会社に求めています。
- 会社名と担当者の名前を聞く
- 「今後の営業は一切不要です」と伝える
- 日時、会社名、担当者、伝えた言葉を記録する
- それでも続けば、国の情報提供受付窓口に送る
断り方と窓口の使い方の詳しい手順は、トラブルの記事の「しつこい営業電話・手紙への対応」にあります。
すでに売った後に気づいたら
会社のお金の動きがおかしい、保証が外れていない。そう気づいたら、早く動くほど選べる手が増えます。
| 相談先 | 頼めること |
|---|---|
| 弁護士 | 契約の解除、補償の請求、刑事の相談 |
| 借入先の銀行 | 保証の扱いの確認 |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 公的な立場での相談(無料) |
| 国の情報提供受付窓口 | 仲介会社の対応についての情報提供 |
国の窓口は、個別の争いの解決はしません。お金を取り戻す、契約を解除するといった話は、弁護士に相談してください。センターの案内は事業承継・引継ぎ支援センターのページにあります。
次に読む
- 国の公表と窓口:M&Aのトラブルと悪質な買い手・業者を避けるには
- 契約書の条項:M&Aの契約書で売り手が確かめること
- 赤字の会社の保証:赤字・債務超過でも会社は売れるか
- 相談先の比べ方:仲介会社・FAの選び方
出典
- 中小企業庁「昨今の中小M&A市場における動向を踏まえた周知・注意喚起について」(2024年5月)
- 中小企業庁「M&Aに係るトラブルの発生を踏まえた対応について」(2024年10月30日、2025年1月24日)
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月)
相談について
当サイトは、売却の申込みを受け付けていません。買い手や契約のことで不安があれば、LINEで聞いてください。
事業承継リサーチ 相談窓口が読んで答えます。社名を書く必要はなく、売り込みもしません。
LINEで相談先を聞くどこに相談すればいいか、手数料はいくらか。社名を出さずにLINEで聞けます。
LINEで相談先を聞く答えるのは「事業承継リサーチ 相談窓口」(運営:株式会社楽笑)。会社名なしで相談できます。相談でできること・回答例
担当者が内容を読んで返信します。売り込みや営業電話はしません。相談内容を相談先に伝えるのは、ご本人が希望し、伝える先と内容に同意した場合だけです。情報の取扱い