はじめての方へ
M&Aのトラブルと悪質な買い手・業者を避けるには
国が公表した注意や登録取消し、悪質な買い手の典型、しつこい営業電話の止め方、契約で揉めやすい点、困ったときの公的な窓口まで。
確認 2026-10-04
はじめに:トラブルは3つの場面で起きる
会社の売却でのトラブルは、大きく3つの場面で起きています。国の資料に出てくるものをまとめました。
| 場面 | 例 |
|---|---|
| 買い手 | 売った後に、約束を守らない買い手がいる |
| 仲介会社・FAの営業 | 断っても電話や手紙が続く。事実と違う話で契約を急がせる |
| 契約 | 手数料や条件の説明が足りず、後から揉める |
どれも、事前に知っておけば防げる部分があります。この記事では、国の公表資料とガイドラインに書かれていることだけを使います。
困ったときに相談できる公的な窓口があります。最後の章を先に見ておいても構いません。
国が公表した注意と登録取消し
年表
中小企業庁は、国の「M&A支援機関登録制度」に登録した仲介会社やFAへの対応を公表しています。資料は制度のトップページに載っています。
| 公表日 | 中身 |
|---|---|
| 2024年5月 | 不適切な広告・営業について周知と注意喚起 |
| 2024年10月 | 不適切な買い手とのM&Aを支援した15の登録機関に注意 |
| 2025年1月24日 | 1社の登録を取消し、6社に注意 |
| 2025年3月14日 | 1社に注意 |
| 2026年9月1日 | 営業の停止を求められたのに再開した1社に、再び注意 |
登録取消しの理由
2025年1月の取消しの理由は、資金力に疑いのある不適切な買い手と知りながら、M&Aを成立させたことでした。全国の事業承継・引継ぎ支援センターも、この会社との連携を止めました(中小企業庁の公表資料)。
注意を受けた6社には、対策が取られなければ次の年度以降の登録を認めないと伝えたそうです。同じ資料は、登録を受けている者の中から相談先を選ぶよう求めています。
2026年9月の再注意
2026年9月の注意は、営業の停止を求めた相手に、営業を再開した件でした。社名は公表されず、所在地(東京都)だけが公表されています(中小企業庁の公表資料)。
中小企業庁は、同じことが再び確認されれば、社名の公表や登録取消しも検討するとしています。
悪質な買い手の典型
ガイドラインに書かれている行為
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」は、次のような買い手がいると指摘しています(中小M&Aガイドライン第3版)。
- M&Aの後に、売った会社のお金を個人の口座に送るなど、違法が疑われる行為をする
- 最終契約で決めた義務を守らない
- 社長の個人保証を買い手に移す約束だったのに、移さない
個人保証とは、会社の借入を社長が個人で保証していることです。移されないままだと、売った後も社長が借金の保証を負い続けます。
仲介会社・FAに求められている調査
ガイドラインは、仲介会社やFAに、買い手を調べるよう求めています。調べる中身の例は次のとおりです。
| 調べること | 例 |
|---|---|
| お金の状態 | 赤字や債務超過でないか。代金を払えるだけのお金があるか |
| 法令を守っているか | 反社会的勢力でないか。過去にM&Aでトラブルを起こしていないか |
| 事業の実態 | 登記や事務所の訪問で、実際に事業をしているか |
| 約束を果たせるか | 預金や借入の見通しで、代金を払える状態か |
仲介会社やFAは、この調査の概要を契約の前に売り手へ説明しなければなりません。最終契約の前に問題が見つかれば、売り手に報告して協議することも求められています。
売り手ができること
ガイドラインは、売り手の会社が債務超過のときなどは、特に慎重に調べる必要があるとしています。買い手の信用が特に大事になるためです。
- 契約の前に「買い手をどう調べるか」を聞き、書面でもらう
- 業界で悪質な買い手の情報を共有する仕組みに入っているかを聞く
- 最終契約に、個人保証を外す買い手の義務を書く
- 外れなかったときの契約の解除や補償の決まりも入れる
業界で情報を共有する仕組みに入っているかどうかも、契約の前に説明するよう求められています。個人保証の扱いは赤字・債務超過でも会社は売れるかでも説明しています。
しつこい営業電話・手紙への対応
ガイドラインが禁じている営業
ガイドラインは、仲介会社やFAの営業について、次のことを禁じています。
| 禁じられていること | 中身 |
|---|---|
| 名乗らない営業 | 会社名、担当者の名前、契約の勧誘が目的であることを告げない |
| 即決を迫る営業 | 考える時間を与えず、その場で決めさせようとする |
| 事実と違う営業 | いない買い手がいるように見せる。値段を大きく見せる。成約を断定する |
たとえば「御社を買いたい会社がいます」という話も、買い手の意向を確かめていなければ禁止の対象です。値段を高く言われても、それだけで信じないでください。
断ったら、ただちに止めるのがルール
ガイドラインは、相手が「やめてほしい」と伝えたら、ただちに営業を止めるよう求めています。この意思を「停止意思」と呼びます。
- 伝えられた内容は、仲介会社の側で記録し、社内で共有する
- 営業を再開するなら、担当者一人で決めず、組織として慎重に判断する
- 行き過ぎた営業は、民法上の責任を負う可能性がある
2026年の公募要領も、停止意思を守ることを登録機関に求めています(公募要領(令和8年度))。
電話が来たときの手順
ガイドラインのルールに沿って、社長がやることを順に並べました。
- 会社名、担当者の名前、電話の目的を聞く
- 制度のデータベースで、登録の有無を確かめる
- 売る気がないなら「今後の営業は一切不要です」とはっきり伝える
- 日時、会社名、担当者、伝えた言葉をメモに残す
- それでも続くときは、後で説明する国の窓口に情報を送る
「一定の期間」や「今後ずっと」と、はっきり断っておくのが大切です。ガイドラインは、明確に全ての営業を断った相手への再開は当然できない、としています。
営業が来たときの対応は、相談先の一覧の会社ごとのページにも書いています。
契約で揉めやすい点
仲介会社・FAとの契約
中小企業庁は、国の窓口に寄せられた例を公表しています。2026年9月の資料の別紙には、次の例が載っています。
| 例 | 中身 |
|---|---|
| 手数料の説明不足 | 成功報酬は5%と聞いていたが、最低報酬が適用され、想定より高く払った |
| 値段の根拠がない | 譲渡額の評価の方法や前提を、事前に説明されなかった |
| 調査が不十分 | 買い手の調査が不十分で、専門家の意見を求められることも知らされなかった |
| 不誠実な対応 | 約束した支援をしない、契約の条件を守らない |
契約書では、次の条項も揉めやすいところです。ガイドラインの目安と合わせて確かめてください。
| 条項 | 揉めやすい点 | ガイドラインの目安 |
|---|---|---|
| テール条項 | 契約が終わった後に売れても、手数料を求められる | 最長でも2〜3年以内。社名を明かして紹介した相手だけ |
| 着手金・中間金 | 売れなかったときに返ってこない | 成功報酬に含まれるかを確かめる |
| 専任条項 | 他の会社に頼めず、乗り換えられない | 最長でも6か月〜1年以内。中途解約の条項が望ましい |
比べ方と面談で聞く質問は、仲介会社・FAの選び方にまとめています。
買い手との最終契約
ガイドラインは、最終契約で確かめる点を挙げています。特に次の3つは、売った後の揉めごとにつながりやすいところです。
| 条項 | 中身 | ガイドラインの注意 |
|---|---|---|
| 表明保証 | 会社の状態が書いたとおりだと約束し、違えば補償する | 期間や上限のない約束は慎重に。調査の結果を踏まえて決める |
| アーンアウト | 売った後の業績しだいで、代金を追加で払う | 目標や金額があいまいだと争いになる。払われないおそれもある |
| 個人保証の扱い | 買い手が保証を外す、または引き継ぐ | 外れなかったときの解除や補償を決めておく |
最終契約は、調印の前に弁護士に見てもらってください。ガイドラインも、最終契約の内容を弁護士に見てもらうことを、セカンド・オピニオンの例に挙げています。
困ったときの相談窓口
事業承継・引継ぎ支援センター
各都道府県にある、国の事業承継の公的な相談窓口です。相談は無料です(事業承継・引継ぎポータル)。
中小企業庁の資料は、手数料や支援の中身に疑問があるとき、センターへのセカンド・オピニオンも有効だとしています。2025年度の新規相談者は2万4,000者を超え、過去最多でした(中小企業基盤整備機構)。
M&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口
登録機関の不適切な対応について、情報を受け付ける国の窓口です。公式ページで次の点を確かめました(情報提供受付窓口)。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 受け付ける情報 | 停止を求めた後も続く営業、重要事項の説明がないなどの例 |
| 送る方法 | 受付フォームだけ。電話での受付は終了 |
| 名前 | 匿名でも送れる。ただし、匿名だと支援機関への通知ができない |
| できないこと | 個別の紛争の解決や助言はしない。対応の結果も答えない |
中小企業庁の資料によると、受け付けた情報は登録機関への聞き取りなどに使われます。内容によって、注意、社名の公表、登録取消しにつながることもあります。
仲介契約に、秘密を守る条項が入っていることもあります。登録機関は、窓口に相談しただけで秘密保持の違反として不利に扱わないと、登録の際に誓約しています。
弁護士
窓口は、個別の争いの解決はしません。お金を請求されている、契約を解除したいといった場合は、弁護士に相談してください。
次に読む
- 相談先の比べ方:仲介会社・FAの選び方
- 手数料のしくみ:M&A仲介の手数料のしくみ
- 売る流れ:会社を売るときの流れと期間
- 言葉の意味:M&A用語集
相談について
当サイトは、売却の申込みを受け付けていません。営業の電話や契約のことで迷ったら、LINEで聞いてください。
担当者が読んで返信します。社名を書く必要はなく、売り込みもしません。
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LINEで相談先を聞く答えるのは「事業承継リサーチ 相談窓口」(運営:株式会社楽笑)。会社名なしで相談できます。相談でできること・回答例
担当者が内容を読んで返信します。売り込みや営業電話はしません。相談内容を相談先に伝えるのは、ご本人が希望し、伝える先と内容に同意した場合だけです。情報の取扱い